第弐章 「打おろし刀」

本当に斬れる刀、より実践的な刀を造り上げる為、著名なる刀匠たちが協力して刀史上最高レベルの斬れ味の「実践的な武器」としての刀を完成させることが出来ました。しかし秋吉先生の要求は厳しく、先生の御眼鏡に叶った作品だけが先生ご自身の手により竹の試し斬りで鍛錬され、「直心刀剣」として刀匠に銘を刻むことを許され、登録を経て初めて世に出ます。このテストに受からなかった打ちおろし刀は、いくら高名な刀匠の作品でも秋吉先生から返品され、「直心刀剣」としては販売されることはありません。「硬さ」と「粘り」と云う最大の重要な要素を満たすため、刀匠たちは最良の材料(砂鉄等)の調合を編出し作刀します。もちろんその調合具合は秘密ですが、良い材料が入手出来ない時には「直心刀剣」の為の刀は作られません。ですから長物などの特別誂えがいつでも受注できる訳ではありません。
無鑑査の名工、宗勉刀匠の作品ですらも、
「斬ってみなければわからない」そうです。
秋吉先生のもとに「出来立て」の打おろし刀が託されます。
まだ銘の彫られていない打おろし刀。いずれも宗勉刀匠の作品。
これらは現在秋吉先生によって試し斬りが行われているところです。この段階で初めて使い物になるかならないかが判別され、刀匠自ら力作と称する作品であっても秋吉先生に駄目出しされればたとえ無鑑査の作刀であれ返却されてしまいます。刀匠自身も皆さん仰るそうです。「火のモノは出来上がってみなければ解らない」と。
秋吉先生の審査に合格し、銘を入れる事が認められた「直心刀剣」。
但し未だ試し斬りによる調整が行われている途中です。

「直心刀剣」のポイントは「硬さ」と「粘り」。折れない為の硬さ、但し硬いだけでは駄目でより強い耐久性を生み出すために欠かせない重要な要素が「粘り」だそうです。砂鉄などの材料の良質さ加減は勿論ですが、「直心刀剣」の刀匠たちの作刀は、何度も何度も錬っては折って重ねると云う作りで、その断層は通常の数倍にもなっています。秋吉先生の要求を満たす為の刀の作りはハンパではありません。

「直心刀剣」の本当の秘密、その斬れ味を生み出す為の工程を次の章で明かします。
それはこの打おろし状態から「完成」と言えるまでの間の工程、「試し斬り」です。
これがあろうことか刀の本当を詳しくを知らない人たちからの誤解、「売る前に何度も竹を斬ったらそれは中古品じゃないか」とか「試し斬りばっかりして傷んだ刀を売る」等の的外れな疑惑を生んでしまった素となったため、ついに最も重要にして企業秘密と云っても過言では無い部分を明かされる決心を、秋吉先生がなされました。
「直心刀剣」のすべて
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